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「この話をしたら美桜が断る事は分かってた。」
「……」
「でも俺の気持ちを知ってもらいたかった。俺は美桜を愛してる。だから幸せにしたい。」
「っ、蓮――…。」
涙で濡れた私の頬を撫でる蓮の手は大きくて温かい。
この手を掴んで愛してると伝えたらきっと幸せになれる。
でも弱い私にはそれが出来ない。
『あの人』から逃げて蓮の胸に飛び込む勇気がない。
蓮が『あの人』に傷付けられる姿だけは見たくない。
蓮の幸せを壊す事だけは絶対に避けたいの。
蓮を守るためなら『あの人』の言う通りにする。
どんな事でも我慢して耐えてみせる。
私は大丈夫。
蓮の気持ちを受け入れられなくてごめんなさい。
でも凄く嬉しかった。
私も蓮を愛してる。
世界中の誰よりも愛してる。
決して口には出来ないけど、いつも心の中で蓮を想ってるから。
幼なじみとしてでいいから私の事を忘れないで。
ずっと覚えていて。
「美桜、これだけは言っておく。美桜の幸せは俺の側にしかない。それだけは忘れるな。」
「……」
「美桜、何も答えなくていい。もう寝よう。」
「……うん。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
蓮、ありがとう。
温かな蓮の腕の中でゆっくりと目を閉じた。
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