甘いキス

12/16
前へ
/28ページ
次へ
「蓮、遅くなってごめんなさい。お待たせしました。」 部屋から出て長い廊下を歩き、玄関に立つ蓮の後ろ姿を見て声を掛けた。 「美桜。」 私の声に気付いて振り向いた蓮の向こう側には、一人の男性が立っていた。 どうしよう。 蓮の他に人が居るなんて思ってなかった。 「お話し中だったのに声を掛けてしまってごめんなさい!!」 慌てて二人の元に駆け寄り頭を下げた。 「美桜、謝らなくていい。世間話をしていただけだ。」 「でも……、」 「とにかく、頭を上げろ。」 「……はい。本当にごめんなさい。」 蓮の声に促されて頭を上げたけど、自己嫌悪に陥った気分は浮上しない。 「美桜、俺の秘書を紹介しておく。佐伯文弥(サエキフミヤ)だ。」 「美桜様、初めまして。お会い出来て光栄です。」 私に向かって優しく微笑み頭を下げた男性は、婚約パーティーの会場を出る時に蓮が声を掛けていたた男性だった。 「佐伯さん。お話するのは初めてですけど、お会いするのは二度目ですよね?昨日の婚約パーティーでは御迷惑をおかけしました。綾瀬美桜と言います。宜しくお願いします。」 佐伯さんに笑顔を向けて頭を下げると、驚いた表情で目を大きく見開いた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加