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「あの、佐伯さん。どうかしましたか?」
「いえ。昨日のパーティーではご挨拶も出来なかったので、私を覚えていて下さった事に驚いて……、」
目を見開いたまま動かない佐伯さんが心配になり声を掛けると、佐伯さんは嬉しそうに微笑みながら事情を説明してくれた。
「私、人の顔や名前を覚えるのが得意なんです。」
「そうなんですね。覚えていて下さって嬉しいです。」
昨日の婚約パーティーで佐伯さんを見た時は、少し冷たい感じがする人だなって思ったけど、凄く優しくて温かい人。
婚約パーティーといっても仕事と変わらないから、あんなに冷たくて厳しい表情をしていたんだね。
「おい、俺を無視するな。」
「蓮様、申し訳ありません。美桜様がとても可愛らしい方なのでつい話し込んでしまいました。」
「佐伯、美桜との会話は禁止だ。今後一切、美桜に話し掛けるな。」
「ちょっと、蓮!!」
私と佐伯さんの会話に入れなかったからって、どうして会話禁止なんて言うの?
こういう自己中心的な考え方は直して欲しい。
「はは、出来るだけ会話しないように心掛けます。それで宜しいですか?」
「ああ、分かった。」
笑顔を崩さずに蓮の無茶な言い分を受け入れる佐伯さんは、本当に優秀な秘書だと思う。
それに王様のような態度で頷く蓮を微笑みながら見ている佐伯さんは、誰よりも蓮の性格を熟知しているみたい。
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