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「佐伯さん、ごめんなさい。」
蓮は失礼な発言をした事に気付いてないと思うから、私が代わりに謝るしかない。
「美桜様、どうかされましたか?」
深々と頭を下げる私の頭上から、佐伯さんの柔らかな声が響いた。
「美桜、どうした?頭を上げろ。」
やっぱり蓮は分かってない。
蓮は頭を上げない私が心配なのか、優しい声で私の名前を口にして頭を撫でる。
「美桜様、頭を上げて下さい。私は何も気にしていません。」
「佐伯さん――…。」
ゆっくり頭を上げて佐伯さんを見つめると、優しく微笑み頷いてくれた。
「美桜様、私に謝罪などしないで下さい。蓮様の気持ちは理解しています。」
「でも……、」
私との会話が禁止なんて横暴だと思うし、佐伯さんと話せなくなるのは嫌なの。
たとえ僅かな時間でも蓮の側に居る以上、少しでも蓮の日常について知っておきたいから、秘書である佐伯さんに色々教えてもらいたい。
「美桜様、大丈夫です。蓮様は本気で゙会話禁止"と言った訳ではありません。」
「え?」
蓮の言葉は嘘だったの?
今まで蓮の口から出た言葉に嘘はなかったから、佐伯さんに対しての言葉が嘘だとは思わなかった。
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