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「美桜は俺の婚約者だ。堂々としていればいい。」
「……」
偽の婚約者なのに堂々と立ち振る舞うなんて出来ない。
私はホステスで蓮は御曹司。
会社の人達からは私が玉の輿を狙って蓮に近付いたって思われる。
私が悪く言われるのは構わないけど、蓮の悪い噂が立つのは絶対に嫌。
「美桜、馬鹿な事を考えてないか?」
「え?」
「美桜の仕事がホステスだろうと、そんな事は大した問題じゃない。」
「でも……、」
蓮は女性の噂好きの凄さを知らないんだね。
もし会社の女性社員に私の姿を見られたら大騒ぎになる。
その噂が園田さんの耳に入って蓮が窮地に立たされたら、私はどうすればいいの?
蓮と恋人を潰すと言っていた園田さんの鋭い瞳が忘れられない。
「美桜。」
「はい。」
「俺は美桜が側に居てくれるなら他に何も要らない。佐久間を捨てても構わない。」
「っ、蓮――…。」
ごめんなさい。
蓮の気持ちは凄く嬉しいけど、私は蓮の側には居られない。
この先の人生を一緒に歩む事は出来ない。
私達の幸せな未来は十年前に閉ざされてしまったの。
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