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「美桜、相手にするな。帰るぞ。」
蓮は園田さんの叫び声に足を止めた私を制して歩き続ける。
「……はい。」
蓮に威圧的な態度を向けられると従うしかない。
本当にこのまま帰っていいのか蓮以外の意見が聞きたくて、扉を開けて私達を待っている佐伯さんに視線を向けてみたけど、優しく微笑みかけられただけで答えは得られそうにない。
「蓮さん。私が待つように言った声が聞こえなかったの?貴方はその女がどうなってもいいのかしら?」
「それは、どういう意味だ。」
私には相手にするなと言ったのに、蓮は園田さんの言葉に足を止めて振り向いた。
「ふふ、そのままの意味よ。私を馬鹿にしてその女が無事でいられるなんて思わないでね?」
「くく、馬鹿が。好きにしろ。俺に脅しなど通用しない。美桜、帰るぞ。」
蓮は挑発的な態度で微笑む園田さんに向かって馬鹿にしたように笑うと、私の手を引き扉に向かって歩き出した。
「っ、必ず貴方とその女を引き離してやるわ!!佐久間も潰してやるから覚悟してなさい!!」
部屋を出る寸前に園田さんが発した言葉が聞こえた瞬間、私は足を止めて振り向いた。
「園田さん、よく聞いて下さい。貴女が私だけを傷付けるつもりなら何も言いません。でも…、蓮を傷付けるつもりなら私が貴女を潰します。本気で私達を引き離すつもりなら、それなりの覚悟をして下さい。失礼します。」
園田さんを真っすぐ見つめて優しく語りかけるように言葉を紡ぎ頭を下げた後、蓮と佐伯さんと一緒に部屋を出た。
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