憎悪

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「失礼致します。副社長、そろそろ出発のお時間です。」 「……きゃっ!!さ、佐伯さん!!」 いつ部屋に入って来たの? 全く気配を感じなかったしドアが開く音もしなかった。 「おい、佐伯。ふざけてるのか?ノックをしろ。」 「ああ、そうでしたね。ノックするのを忘れていました。美桜さんとの大切なお時間をお邪魔してしまい申し訳ありませんでした。」 「ちっ、忘れただと?嘘をつくな、白々しい。わざと邪魔したんだろ?」 「副社長、私は嘘などついていません。美桜さん、お邪魔して申し訳ありませんでした。」 「い、いえ。大丈夫です。」 蓮に抱き締められている姿を佐伯さんに見られたなんて凄く恥ずかしい。 仕事中に不謹慎だなんて思われてたらどうしよう。 「副社長、下に車を待たせてあります。急いで御準備下さい。」 「佐伯、俺の話はまだ終わってない。やっぱりふざけてるだろ?」 「副社長、時間がありません。お話は車の中でお願い致します。」 「ちっ、分かった。美桜、行くぞ。」 「は、はい。」 やっぱり佐伯さんは蓮の扱いが上手い。 いつも王様のように偉そうな蓮が佐伯さんの前だと大人しくなる。 私達の前を歩く佐伯さんの後ろ姿を尊敬の眼差しで見つめながら部屋を出た。
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