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「美桜、今言った事は全て事実だ。俺が十年かけて調べたから間違いない。」
「……」
蓮は嘘をつくのが嫌いだから、絶対に曖昧な事は口にしない。
だから全て事実なんだと思う。
柳瀬光也と園田さんはパパから大切な会社を奪い苦しめ、私達家族の幸せに満ち溢れていた毎日を壊した。
許せない、絶対に許せない!!
「美桜、落ち着け!!唇を噛むな!!」
「っ、わ、私……、」
蓮の叫び声で我に返った。
怒りを抑える事が出来なくて無意識に唇を強く噛み締めていたのか、口の中にジワジワと鉄の味が広がっていく。
「美桜、大丈夫か?血が出てる。」
蓮の指先が私の唇に優しく触れる。
口の端から流れ落ちた血が蓮の指先を真っ赤に染める。
「っ、あ、血が……、れ、蓮――…、」
「美桜、落ち着け。俺は大丈夫だ。何処も怪我してない。」
今の私に蓮の声は届かない。
頭の中に浮かんだ光景を掻き消すように、真っ赤に染まった蓮の指先を握り締める。
車の中で血を流しながら苦しむパパとママ。
『美桜、助けて』と私を呼ぶパパとママの悲痛な叫び声。
事故現場を目撃した訳ではないのに、真っ赤な血を目にすると頭の中に生々しい光景が流れ込んでくる。
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