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世界地図にも乗らないほど小さい国セリシア国、面積は世界一小さく西方の国では珍しい四季がはっきりと別れる国だ。面積は小さいが知名度は世界一だ。
春には美しい桃、黄、赤の色とりどりの大小さまざまな花が咲き誇り
夏にはまるでキャンパスの絵具をそのまま取ったかのような群青色の空。秋には多くの果樹園にほっぺが落ちるようなおいしい果実が実り、冬には葉の落ちた木々に真っ白な雪が降り積もり幻想的な世界を作りだす。
セリシア国の知名度が高いのはそんな美しい四季のおかげでもあるが、国土の3分の1を占めるリジガル地方の認知度の方が大きい。
確かにセリシア国には四季がある。だが、リジガル地方以外のところはそこまで気候の変動がない。大きく分かれた四季はセリシア全土に言えることではなく、リジガル地方のみに言えることなのだ。
そして、リリジガル地方の中央にそびえるエルブルース山、その頂上に建つベラリオール城、別名「漆黒の城」に住むのはエルジェ・トリバーという名の若き女領主がとても美しいということで有名だった。
漆黒の長い黒髪、ガーネットのような意志の強い真っ赤な瞳、日の光を浴びたことがないような、真っ白な肌の彼女は真っ白な服を好んだ。
「白」、その一言に尽きる彼女はまるで天使だった。
暇さえあれば城下へ赴き、民と交流をする。小さな子供には本を読んで聞かせ、お年寄りには美しい歌声を聴かせた。
城下の人々は、そんな彼女に敬愛を込めて「白い魔女」とよんだ。
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