例えばこんな質問。

2/9
前へ
/37ページ
次へ
立ちくらむほどに暑い夏だというのに、薄暗く湿った空気はヒヤッと冷たく、吸い込んだ酸素と一緒に湿り気が喉に入り込んできて、むせそうになる。 湿度が高く、太陽の光も入らないぬかるんだ地面に小さな足跡が点々とついて、その跡を追うように小さな影が追いかける。 その影は少女の形をしていた。おかっぱ頭の黒髪をふわふわ揺らし、薄手のティーシャツの裾と花柄が可愛らしい膝丈のスカートの裾を、ヒラヒラと泳がせながら歩いていく。 どうやら少女には目的があるようだが、こんな不気味な森の中をたった一人で歩く姿は誰がどう見ても危なげだろう。 しかし少女は一人ではないようだ。少女の前を転がるように滑らかに歩くのは、黒猫。しなやかな体が艶のある漆黒の体毛を見せつけるようにくねらせ、時々立ち止まり振り向いては少女を待っていた。 黒猫の瞳は、光が届かないこんな山奥でも輝く金色。少女の真っ黒で大きな瞳は、闇に紛れてしまいそうな黒猫を目で追い、追いかける。 そうしてぬかるみに足をとられながらも、目的の場所へついた。そこは、高く伸び放題の木々と薄暗いこの周囲の視界の悪さで把握しきれないが、古びた洋館のようだった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加