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この洋館、昔は病院だったそうだ。若い夫婦がやっていて、主人が外科医、妻は助産師。しかし、こんな山奥では病人など来ず、まして妊婦が歩いて森を抜けるという事はなかなか出来ないものだった。車道もなく歩くのさえ困難なやわらかい地面。
当然、数年も経たずに廃業……となるはずだったが、この夫婦はこの病院を"こうのとりの館"と名付けた。ここで愛を育み、やがて舞い降りた子どもは必ず幸せになれるとふれまわったのだ。
すると、ぽつりぽつりと来客が増え、滞在するようになった。この病院はホテルとしても機能し、やがていくつもの産声が聞こえた。
命の産まれる場となった洋館は、噂を聞きつけた人々によって繁盛したが、夫婦に子どもが授けられる事はなかった。
やがてまた時が経ち、この洋館は病院を辞めた。外科医の主人が亡くなったのであった。その後を追うように、妻も寄り添いこの洋館から人がいなくなった。
それからというもの、また一つの噂が街に流れる。
"山奥の洋館には幽霊が出るらしい"
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少女がこの洋館を訪ねる理由とは……?
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