4人が本棚に入れています
本棚に追加
「センパイ。」
そう言うと、意表を突いてきた。突拍子も、予想だにもしない行動。再び、さっきとは逆に僕をさやかセンセイは抱き寄せた。
「ちょっと。どうしたんや。さやちん。さっきのハグとは、状況がちょいと違うって。さやかせんせい。どうしたん?あかんよ。ここまでにしようか?
休憩とはいえ仕事中やで」
そう言いながら、再びハグしてきた身体を離そうとしたけど、しがみついた様な形でかなり力強く、予想もしてなかった行動だった為に、本来の力が入らなかった。離すことが出来ない。
マズイ。理性を保て。
相手は、仕事の相方。そして後輩。保育士。
ここは、仕事場。
子ども達が生活する聖なる教室。
おい。勇人。理性を保て。
「センパイ。センパイの本音を初めて聞いた様な気がします。とっても嬉しいです。もいちょっとこのまま居てもいいですか?
改めて、センパイとこのクラス。コンビになって良かった。
センパイの副担任になって良かった」
いつしかさやかせんせいは、センセイからセンパイに呼び名を変えていた。そのことに今気づき更に鼓動が早くなる。
そしてこの問いかけにどの様にして、切り返したらいいのか、一瞬の間では、思いつかなかった。どの回答を伝えても、どれも不正解な気がして、言葉になって口から出ようとしなかった。
イチ仕事の相方。保育士、同僚だと思っていたにしのさやかを、この状況の中でどうしたら、どの様に見ればいいのかわからないでいた。
それ位重くのしかかってきている。
理性を失いかけていた。
「センパイともう少し早くに知り合っていたら、わたしの横には、センパイがいたのかもしれない。
優しいし、センパイなら、あんな事しなさそう。大事にしてくれそう。」
もうダメだ。そんな事言われたらどうしようもない。1人の女のコとして女性としてにしのさやかを見てしまう。決して超えてはいけない壁。決して超えてはいけない思い…。
僕は、さやかセンセイの顔をマジマジと見つめ、保育士のセンパイとしては、あるまじき行為に出てしまった。オトコとオンナのどこにでもある甘い甘い空間に包まれる。
最初のコメントを投稿しよう!