僕が太陽

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そう、ふるかわまいセンセイとは、同期の保育士で、今年で6年目。去年初めてコンビを組み、3歳児クラスを受け持った。今年の春に園長から、今までの歴史の中で最強と言われたコンビだったと褒められる。最後の昭和生まれ組で、何でも相談し合える仲の一人。だからこそ、僕のよそよそしい態度を見逃さない。 「何もないって。まいぽん。ホンマに。」 「いや。何かある。この空気いつもとちゃうもん。 まぁ、朝からはやっぴさ、可笑しいかったもんな。心ここに在らずって感じで。 あっ。さやかセンセイおらん。はやっぴせんせい。さやちんは?」 「トイレ掃除してくれてるはず」 おそらくまいせんせいには、平静を保ってるはずであろう僕の、細かな変わり様を見逃してないのであろう。明らかに察している様に見えた。 「そうなんや。まあ、さやちんに聞けば分かる事やし。後で聞くわ。覚悟しときや。あっ、そうや。今日の夕方付き合って欲しいとこあるんやけど、かまへん?」 「うん。ええよ。何かあるん?」 「梅田に行きたくって」 話を切り替えたけど、やっぱりお見通しな感じやと覚悟を決めた。それにあんなに泣いたさやかセンセイやから、あの眼をみたら絶対何か言われること間違いないはずやし。 それまで猶予が伸びただけのこと。 なんせ、あんな事してしてしまった僕とさやかセンセイ。どうなるんやろ。ぎこちなくなるんやろうか。なるんやろうな。 どないしよ。普通に話をこのトイレ掃除から帰ってきたさやかセンセイと面と向かって話せるか自信ないわ。 あの涙、あの声、あの仕草、あの匂い、あの感触…。全てを思い返しながら、さやかせんせいのトイレからの帰りを待った。
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