僕が太陽

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まいせんせいが部屋から出てからしばらくして、さやかせんせいはトイレ掃除を終えて、部屋に戻ってきた。涙でぐちゃぐちゃだった顔も、元の普段のさやかせんせいに戻っていた。 ただ、少しやはり目が腫れていた。そして少し表情はなにかぎこちなく硬い感じで。 しばらく、僕は今日の日誌を、そしてさやかせんせいは、子ども達の連絡帳に目を通して、今日の園での様子を一言添えていく作業に入っていた。 2人してコーヒーを口に含みながら飲み干そうとしたとき、目が合った。 「ところで、せんせい。さっきのマイメロちゃんの中には何が入っていたんですか?」 「見てない。何かみたらあかんような気がして。誰のんかわからへんし」 数時間前のいつもとかわらない素振りを見せていた普段のさやかせんせいがそこにはいて、さっきの硬い表情はどこかいっていた。いつもと変わらず明るい声を出していた。もっと、よそよそしくするもんばかり思っていたから、腰砕けたが、それの方が気分的に楽だった。また引きずったままで、何も喋れなければそれこそ関係を修復させるのに大変な事になる。それこそ、まいせんせいどころの話では済まされない。 その辺は、保育士としてのプロ意識が前面に出ていた。 「でも、もしかしたら子どもが間違っていたんかも?」 「そうか。子どもらがってな事もあるか。見てみよう。」 もう一度、鞄からマイメロちゃんを取り出した。 中を見てみると、さやかせんせいも近寄ってきて、一緒に覗き込んできた。一瞬ドキッとしたが、さやかせんせいは、笑いながら僕の背中を思いっきりバンって叩いた。 「もう、何もないよ。あったらマズイやんか。もう、そんなにコドモではありません。センパイ意識し過ぎやと思います」 そう言いながら、手を叩きながら笑っていた。そこには、もういつものさやかせんせいが居た。周りを気にしながら気を配るのが上手なさやかせんせいがそこにいる。ちょっと一安心した。あっ。 「でも、少し目が腫れてるわ。へんな事にさせてごめんやで。」 「なんでセンパイが謝るん?謝る必要なんかあらへんやん。そんなん逆に謝れたら、こっちが逆にどうして接したらいいかわからへんくなる。だけどあの優しいセンパイの対応がさっきはありがたかった。あんな事があったからずっとモヤモヤしてて。それを吹っ切れるチャンスを貰ったような気が。逆に感謝して、お礼を言わなきゃいけないんです。」
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