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西野彩海。昨年、入職した2年目の保育士。今年三歳児クラスゆり組を僕と担当した。若きエースで、即戦力とさえ感じられ、僕より保育士に向いてると 感じることもしばしば。
何事にもどん欲で、なんでも質問して、すぐに吸収してしまう。でも、聞き方も、訪ねかたも、しつこく感じず、すんなりと、懐に入ってくる。これは、有る意味最強の武器と言っても過言ではない。
そんなに近い将来中心の言わばセンターになる存在のさやかせんせいから、僕が太陽のような存在?それは買い被りすぎだ。僕にはそんなチカラもない。
そんな、さやかせんせいが僕に興味を持ちかけてる。
これから、どう接していけばいいのか、分からない。朝に出会ったまつださんの存在さえ薄くなってる。
「誰かのアドレスが書いてる紙が入ってる。携帯番号まで。入ってる。誰かに渡すつもりでいたのか、もらったものなのか。あとどこかのカード?IDカードの様なものも入ってる。わからないですね。」
この数分間の沈黙をさやかせんせいが破った。温もりというかホッとした瞬間をだしてくれている。
「はやとセンセイ。もう、おしまい。わたしは大丈夫です。センパイは優し過ぎるんです。そんな、ヘンテコな態度見せてると、女のコは、間違えてしまうんですよ。」
そういう風に言われても。これはもう自分でもどうしようもなく、性分やからな。
そう思っていても、さやかせんせいの口は止まらない。
「もうどうするんですか?失恋したばかりのわたしの穴が空いた胸の中に、灯ってしまったじゃないですか。知らないですよ。センパイの事好きになっても。」
そう言って自分の持っていたタオルで、僕の残っていた涙を拭いてくれた。
ステキな笑顔を見せてくれたさやちん。
そう言ってくれた言葉に、僕はまただんまりして返す言葉が見つからなかった。でも口から出ようとする言葉に委ねて言葉を発した。
「まぁた冗談を。そんなにイケメンじゃないし、優しくないし、口下手やし、オモロないし、大事な同僚を泣かす、へんな奴やで。ありえへんわ」
僕は、自分の作ったコーヒーを飲み干して、さやかせんせいの肩を叩いた。
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