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「修二君、疲れた?」
俺の名前を呼んで気遣うような視線を向ける小柄で可愛い女性は、今日から俺の奥さんになった久遠理奈(クドウリナ)だ。
俺と同じ名字になった理奈が愛おしくて仕方ない。
「いや、大丈夫だよ。理奈は疲れた?」
「ううん、凄く幸せな気分だから疲れたりしないよ。」
可愛い事を言って微笑む理奈を今すぐ抱き締めたい。
俺の腕の中に閉じ込めて誰にも見せたくない。
「……あ、やばい……はあ、」
理奈に向かって伸ばしかけた手を見て我に返った俺は、ゆっくりと手を引っ込めて溜息をついた。
「修二君、どうしたの?」
「いや、自分の馬鹿さに呆れてるだけだよ。」
眉をハの字に下げて俺を見つめる理奈に笑いかけると、周りに集まる人達に視線を向けた。
「おい、修二!!飲んでるか?」
「煩い、俺に近付くな。」
「おい、酷い奴だな!!それが親友に対する態度か!!」
俺と理奈の前に立ちはだかり大声で騒ぎ出した男は、小学生の頃から一緒に過ごしてきた渡辺貴司(ワタナベタカシ)だ。
金髪を靡かせてチャラチャラした雰囲気の貴司は、披露宴後のパーティーに集まっている友人達の注目の的だ。
いい年して金髪なんて馬鹿だと思うが、貴司の職業を知れば仕方ないと納得するしかない。
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