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少し長めの前髪に隠れ少年の表情は全てを窺えないが、口元は三日月を模している。
辺りと対照的な透き通る白い肌に爪を立てながら、少年は口元をきつく結んだ。
「僕が……取り返すよ」
少年の傍にいた男性は、首を傾げながら問い掛ける。
「何を……でしょうか?」
フッ、と、嘲笑うかのように立ち上がった少年は、すれ違いざまに男性の肩を軽く叩いた。
「世界をだよ」
無表情を貫いてきた男性だが、この時ばかりは顔が綻んだ。
つられて立ち上がり、先を行く少年の後を足早に追いかける。
二人は庭園の奥へと消えていく。
まるで闇に呑み込まれる様に。
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