プロローグ

3/3
前へ
/144ページ
次へ
 少し長めの前髪に隠れ少年の表情は全てを窺えないが、口元は三日月を模している。 辺りと対照的な透き通る白い肌に爪を立てながら、少年は口元をきつく結んだ。 「僕が……取り返すよ」  少年の傍にいた男性は、首を傾げながら問い掛ける。 「何を……でしょうか?」  フッ、と、嘲笑うかのように立ち上がった少年は、すれ違いざまに男性の肩を軽く叩いた。 「世界をだよ」  無表情を貫いてきた男性だが、この時ばかりは顔が綻んだ。 つられて立ち上がり、先を行く少年の後を足早に追いかける。  二人は庭園の奥へと消えていく。  まるで闇に呑み込まれる様に。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

570人が本棚に入れています
本棚に追加