第一章 女王、幼馴染?

2/72
前へ
/144ページ
次へ
 この道を行けばどうなるものか。 いや、学校に続いているんだが。  夏の香りが漂い始めたごく一般的な二車線の道路。 きっちりと整備された歩道を歩きながら、色濃く葉を染めた街路樹の下を進む。  鬱陶しいほどに鳴き続ける蝉の必死な求婚活動を耳にしながら、蜃気楼の出現したクソ暑い道を俯きがちに歩いていた。  夏真っ盛りの八月二日。 間もなく夏休みを迎え、頭の中は如何に遊ぶかで埋め尽くされている。  受験までは後一年あるし、成績だって絶望的なレベルじゃない。 単に俺はまだ本気を出していないだけだ。  自分への言い訳? 結構じゃないか。 十七歳は一度しか訪れないんだ。  全部の年齢がそうだろうなんて野暮なツッコミは頂けない。 そういう奴は彼女どころか、好きな奴一人いやしないんだろう。 「呉羽<クレハ>ーっ!」  所謂、余裕の笑みというやつを浮かべていた俺の許へ、栗色の肩まで届きそうな髪を靡かせながら駆けてくる。 振り返れば、同じく栗色の目を細めながら、か細く透き通った白い肌の腕を振っていた。 「ハァッハァッ……おはよ」  神様でも萌え殺させそうな微笑みで、女の子――”神野瑠奈<カミノルナ>”は俺に挨拶をした。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

570人が本棚に入れています
本棚に追加