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走った事で乱れた呼吸と同じく乱れた襟元を正しながら、瑠奈は俺の隣で両膝に手を尽き、荒れた呼吸を整えた。
やけに色気のある首筋を見下ろしつつ、俺も同じく挨拶を返す。
「おはよう。瑠奈」
毎朝恒例の他愛ないやり取りに頬を緩ませ、瑠奈の呼吸が整うと同時に歩き始めた。
俺の肩の高さにあるエンジェルリングは、今日もくすむ事無く輝いている。
十人中十人が振り返る美少女が隣を歩き、すれ違う人々に優越感を覚えた。
幼い頃から変わらない小さな自尊心。
瑠奈の幼馴染である事だけが、俺にとって唯一他人へ自慢できる事だ。
一層強く鳴き始めた蝉の声に眉を顰めた俺と、楽しそうに耳を傾ける瑠奈。
鳴かず飛ばずな成績の俺と、学年トップに君臨し続ける瑠奈。
見渡せばそこらにいそうな中肉中背の普通な俺と、見渡しても見つからない絶世の美少女である瑠奈。
全てが対極で遠い存在。
だから余計に、幼馴染である事に拘っている。
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