真夏の雪と虹色の螺旋

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静かな海辺には虹色の貝殻がどこからともなく流れ着き わたくしはそれを不思議そうに眺める それはまるで異国から流れ着いたメッセージボトル 螺旋を背負ったわたくしは 太古の記憶に想いを巡らせ 記憶のジグゾーパズルを繋ぎ合わせる それは甘く甘美な記憶の断片 ふと君に似た女性がわたくしの目の前から虹色の貝殻を拾い上げる わたくしの記憶はだんだんと鮮明になり 遠い日が蘇る 真っ青な海 そして遥か向こうに入道雲がみえる 太陽の光は無数の光線となり わたくしに降り注ぐ 君は浜辺に落ちている虹色の貝殻を拾い上げ わたくしに両の手で差し出す 嗚呼 その輝きを纏った光景は それはなんとおぼろげでなんと美しいのだろう 君の唇から紡ぎ出される旋律は なんと儚くなんと美しいのだろう 君の白い光のような美しさは現実味すら感じさせず まるで真夏の空に舞う雪のようだ 真夏の雪は手のひらに捉える事も叶わず ただただ美しく舞い わたくしの心を締めつける 真夏の雪がふとわたくしの額に触れ 時が流れ出す 既に先ほどの女性の影は無く 浜辺では一匹のヤドカリが ただ寂しそうに波打ち際にたたずんでいる
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