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いつも通りの日常をこなして、両親が死んで遺してくれた誰もいない一人暮らしのマンションに着いたら、鍵をかけてあったはずの部屋にこの子はいた。 いや、驚くべきところはそこじゃない。 いや、それも驚くとこなんだけど。 だけど、それより。 何がすごいって? 「……………お前、猫なの?人間なの?」 まずはそれを、確かめたかったのを覚えてる。 白い首筋にはネックレスかなんだか知らないけど、黒いベルトのようなもの。 黒いTシャツに黒い細身のスキニースボン。 黒い猫耳に、黒くて長いしなやかな尻尾。 眼球もおまけに黒くて。 まるで黒曜石。 そして次に確かめたんだ。 「お前は誰?」 って。 だがそのあとすぐに考えた。 もし仮にこいつが猫だったとして、こいつは人間の言葉が分かるのか?と。 分かるには分かるのだろうが、話せるのか?と。 とにかく、混乱した。
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