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「さぁ、アリス様。喫茶ワンダーランドへようこそ」
握られた手を引かれて、その手に目の前の男性の唇が触れる。
恭しく手にキスをされ、私は驚いて手を引っ込めた。
「ぼっ、帽子屋さん!」
焦って出て来た言葉は、少女のようにメルヘンチック。
自分は何を言っているんだろう、と更に恥ずかしくなった。
でも帽子屋と呼ばれた本人は、嬉しそうに微笑んでいた。
「アリス様、自己紹介が遅れて申し訳ありません」
そう言って私の前にひざまずく。
「副店長兼会計をしております、帽子屋の橘悠(はるか)と申します。橘とお呼び下さいませ」
「たっ、橘…さん。どうか頭を上げて下さい!」
この構図に堪えられなくて、慌てて橘を立ち上がらせる。
「…おい」
真っ赤になって俯いていると、橘の後ろから同じくらい背の高い男性が顔を出した。
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