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 そんなことを考えていると、タワシ頭がぼくの向かいに座り込み「お前、なに飲んでんの?」と、ぼくの前にある空になったグラスを指さした。 「あ、これ、烏龍茶……っす」  申し訳ないが、どれだけ思い出そうとしてもこのタワシ頭が誰なのかわからない。思わず、体育会系の変な敬語みたいな返事になってしまう。 「なんだよ、飲まねえのかよ? つまんねぇな。おい、まな板、こいつに烏龍茶持ってきてやれよ」  タワシ頭には、ぼくが誰だかわかっているのだろうか。だとしたら、彼が誰なのか早めに思い出しておかないと、とても失礼だ。いや、今でも十分に失礼か。 「まな板、相変わらずかわいいよな? くそっ、お前に独り占めはさせねぇぞ」  タワシ頭に言われて、飲み物を取りに席を立った緒方真奈依の後ろ姿を見送りながら、タワシ頭はそう言って顔をくしゃりとして笑う。 「緒方真奈依、結婚してるんだろ?」 「でも、いい女じゃねえか。どうせ飲むなら美人と飲みてえだろうがよ!」  うちの元同級生には緒方真奈依以外に美人はいないのだろうか?  ぐるりと会場内を見回してみる。  たしか、ぼくのクラスは全員で三十五、六人だった。見た感じではどうやら全員が出席しているわけではなさそうだった。  ぼくの記憶力が悪いのか、はたまた、みなが変わりすぎてしまったのか、パッと見た限りでは誰が誰だか識別できない。  それでもぼくから見れば、きれいだと思える女性は何人もいるように思えた。タワシ頭はかなりの面食いなのだろう。
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