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「誰探してんだよ? 川内か?」
どうやらタワシ頭はぼくがキョロキョロと周囲を見回していることに気づいたらしい。
タワシ頭の言う川内というのは川内淳子。小学生時代にぼくが好きだった人だ。
「淳子ちゃんは今でも川内なのか?」
「いや、今日はまだ話してねぇから知らねぇけどよ。タイムカプセルを掘りに来たときはまだ川内だったぜ」
「そうなんだ?」
もう一度周りを見てみたけれど、どれが淳子ちゃんなのかわからないまま、ぼくはずっとくわえたままだったタバコに火をつける。
「昔はあいつもかわいかったのにな」
タワシ頭は後ろを振り向き、ぼそりと言った。
その、彼の視線の先に淳子ちゃんがいるのだろうけど、ぼくにはやはり淳子ちゃんの姿を見つけることはできなかった。
「ワッキンはビールでよかったんだよね?」
白いミニスカートがぼくの横で立ち止まり、その上のほうから緒方真奈依の不機嫌そうな声がした。
ああ! ワッキン! ワッキンね。いたいた。ようやくタワシ頭の正体が判明した。中学生時代の彼も知っていたが、雰囲気が変わりすぎだ。昔はクラスでも一、二を争うほど小さかったのに。
緒方真奈依は、ドン! と乱暴にビール瓶を置くと、ぼくの隣に座り「ペットボトルごと持ってきたよ」と、顔の横に烏龍茶のペットボトルを掲げて笑った。
「なんだよ、まな板。俺とカンとじゃ、全然扱いが違うじゃねえか」
ワッキンは、緒方真奈依が持ってきたビールをグラスに注ぎながら、下顎をつき出す。
ワッキンの言葉を聞いて、小学生の頃のぼくがカンと呼ばれていたことを思い出し、その呼び名で呼ばれることが少し懐かしく思えた。
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