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ひと月ほど前にかかってきたその電話によってぼくは今回のクラス会の日時を知らされたのだけど、その電話がちょっと不思議なものだった。
電話の相手は女性だった。彼女の名前を聞いても誰だかわからずにいたのだけれど、彼女はそんなぼくにはお構い無しに「久しぶりだね」と明るい声で言った。
「どうしていつもクラス会に来ないのよ? タイムカプセルを掘るときにも来なかったしさ」
彼女のその言葉で、相手がぼくの小学校時代の同級生だと思った。タイムカプセルなんて小学校卒業時にしか埋めた覚えがなかったからだ。だけど、まだ相手の顔だとかどの程度の付き合いのあった同級生だとかなど、そういったものを思い起こせずにいた。
「ああ、ごめん。いろいろ忙しくて」
ぼくは適当に応えた。
「嘘ばっかり」
彼女はクスクスと笑う。
「そんな言い訳をしているってことは、さては、まだあたしが誰だかわかってないんでしょ?」
彼女の口調は自分のことを思い出せずにいるぼくに対してべつに怒っている風でもなく、むしろそれを楽しんでいるようだった。
「ごめん」
頭の中で小学校時代の同級生たちの顔を順番に思い浮かべながら、ぼくはまた謝る。
「じゃあ、ヒントね」
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