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つい私も呼び捨てにしてみたくなった。 えーい、アユとメグって呼び捨てにしちゃえ。 人生初の、それも出会ったばかりの友達の呼び捨てに、清水から飛び降りる気持ちで… 「そ、そんなメグもアユも悪趣味です。人の失敗待ってるなんて…。」 口を尖らせて遠慮がちに抗議した。掌にジットリ汗をかきながら反応を伺う。 二人の笑顔は変わらなくて、初めての友達呼び捨てに一瞬緊張した体が緩んだ。 目まぐるしい心の変化に、心臓はさっきから煩いくらいドキドキを繰り返している。 二人は気付いてないようでホッとする。 「失敗して誰も何も反応しなかったら反って凹むでしょ? 笑って貰う方が、気持ちが楽になるよ。だから、紗彩矢の為にもなる。私達も楽しい。 ほら、一石二鳥じゃない?」 メグの言葉は一理ある。笑われてちょっと楽になるのは、たった今経験ずみだ。 緊張の反応を種に笑われることは不本意ながらも、人見知りの私に早速出来た友達の笑顔に、いつしか自然な笑顔を向けることが出来ていた。 姉御肌のメグのお陰で、友達のいない寂しさを味わうことなく高校生活を始められる。 遠慮のない二人に親しみを感じる。 楽しくなりそうだ… これから始まる高校生活に不安より期待が大きく膨らんだ。
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