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昼休み 「真木さん行こうか?」 高橋くんが声を掛けてきて、二人で進路相談室に向かう。 並んで歩くのが恥ずかしくて、高橋くんの数歩後ろを追うように歩くと、突然高橋くんが歩を止め振り返った。ぶつかりそうになるのを辛うじて回避し一歩下がって見上げると、眼鏡の奥の優しげな瞳と視線が合って頬が一気に熱くなる。 「何で後ろにいっちゃうの?」 「は、恥ずかしくて…」 その言葉に高橋くんはクスッと笑って横に並んだ。 「これから一緒に行動することが多くなるから、早く僕に慣れてね。 それから敬語は無し。」 そう言うと背中に手を置かれて一緒に歩くように押された。 男子に触れるなんて小学校以来だ。それもフォークダンスや遠足で先生の指示の元にだ。 こんなに近いところで男の子の意思で触れられるなんて… その事実だけでパニックだ。真っ赤な頬に心臓バクバク頭はクラクラ… こっちは立っていることが不思議なくらい動揺してるのに、高橋くんは変わらぬ涼やかな笑顔。 ちょっと…その手のせいで私思うように動けないんですけど… 高橋くんに抗議したいくらいだけど、そんなこと言える筈もなく… 触れられた背中に感じる温もりに気持ちが集中して足どりも覚束ない。 「あ、あ、あ、あのー、ちゃんと横を歩くから大丈夫です。」 その手から逃れるように前に進むと 「ほら、また敬語。為なんだから、もっと気楽にね。」 「ご、ごめんなさい。」 慌てて謝ると、困惑した顔に口角だけあげて笑われてしまった。 きっと呆れられたよね。 落ち着いてる高橋くんにはタメ語で話しにくいんだよなー。 変な汗をかきながら彼の横を歩いた。 特別教室棟の二階に職員室があり、その隣に進路相談室がある。 職員室に寄って高橋くんが早川先生に声をかると、先生がニコニコしながら職員室から出てきた。
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