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「………想像以上にズタボロじゃねぇーか。……カッコ悪ぃ。」
ざまぁねぇな。
向かい合う相手の、黒く濡れた唇の端が吊り上がる。
衝動的に上体が前へ傾いだ。
目の前の相手に詰め寄ろうとして、失敗して膝から崩れ落ち、硬直した腕を突き支えにすることも出来ず、倒れ込んだ身体は水溜まりに沈む。
翼をもがれた羽虫のように、汚れた身体を更に黒く汚し、肉の欠けた右腕と両脚をもたつかせ、水溜まりの中懸命にもがく。
引き摺る足音と、地面に伸びた他人の影が近付くのを視界の端に捉え、ようよう震える肘を突き、上体を幾らか起こせたところで凍りついた。
「…っ、ち……、…しょ……ッ。」
畜生。
口汚い悲鳴はまともに音にならずに、裂かれた喉からほぼ呼気と化して漏れていく。
まだ『そこ』に在ったなら、武器を手にしない左腕は振り上げられ、罪の無い地面に幾度となく拳を叩きつけていただろう。
………どうしようもない口惜しさ。
行き場を無くした苛立ちと、絶望と悲しみに荒ぶる心のまま。
………ちくしょう。
畜生畜生畜生!!!
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