5:安心と危険は常に隣り合わせに存在する

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脱衣所で倒れている僕を見つけたのは、鍵がなくて部屋に戻れなくなった、先輩とよんちゃんだった。よんちゃんが言うには、僕の首には、浴衣の帯が巻き付けられていたらしい。 気がついた僕は、部屋で一晩中泣いていた。おくすりなくして安全はないと、僕は悟ってしまったのだ。だから二人がどれだけ声を掛けても、僕は聞く耳を持たなかった。むしろまた幻覚なのではと、二人を疑ったりもした。 帰りの車の中でも、おくすりがきれたことによる離脱症状は治まらず、頭痛と吐き気に苦しめられた。 結果、旅行は僕にとって、散々な思い出となった。 家に帰って、僕は速攻おくすりを飲んだ。2錠。いつもの倍の量だ。安心した。不安が一気にぶっ飛んだ。まさにそれは、地獄から天国。その差を知った僕は、もう二度と、おくすりなしでは生きれない、そう思った。 まさかその先に、とんでもない落とし穴があるなんて、その時は知るはずもなかった。
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