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「それはそうと、嗣人に手ェ出したりしてないよね?」
話の終了を察知し、部屋に戻ろうとする俺の腕を、先生がぐっと掴んだ。
「するわけないじゃん」
内心どぎまぎしつつ、俺は二度目の嘘をついた。
「俺、先生のことが好きなんだし」
「そう、ならいいんだけどね」
先生はそう言うと、意味ありげな笑みを浮かべ、俺の腕を離した。
「あの子があぁなったのって、強いストレスが原因かもしれないって。あの子にとってそういう行為はトラウマでね、引き金になりやすいんだって」
どうしてもっと早く言わない、そう言いたかった。でももう遅い。どうやら嗣人くんの崩壊に、俺は一枚噛んでいたらしい。
先生の手前、その場ではポーカーフェイスを装ったが、俺は叫びだしたいくらいショックだった。そしてからかい半分で嗣人くんに関係を迫ったことを、今さらながら後悔した。
その日から、俺は嗣人くんとどう接していいのかわからず、嗣人くんに冷たい態度を取るようになった。自責の念は絶えなかった。
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