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羨ましい。
仕事の話をするとよく言われる。
圭にとって一番嫌いな言葉だ。
高校の時に演劇部でいじった音響機材がきっかけで、音響という仕事についた。基本は舞台の音響が多い。
景気が悪い昨今、舞台業界も客席が埋まらないとどこの舞台制作会社も嘆いている。有名で歴史のある劇団でも、土日等の一般的な休みは満席にできても、平日は裏でご招待チケットという名前の無料チケットがとびかっている。
そんな中ブームになっているのは、イケメン若手俳優による舞台だ。若くて芸能界に入ったばかりの青年たちに劇場に行けば会えるという間近な距離や、ファンが増えればそれに比例して主演舞台が増えていき、応援しがいがある等の理由で彼らが出演するというだけで平日から土日まで全席完売になる時もある。もちろん、ドラマや映画で有名なイケメン俳優が出演しても完売にできるが、テレビ等、お茶の間では有名でない彼らのギャラは、舞台制作会社にとって優しい価格であった。
そんなブームにのっとり、圭の務める音響会社もイケメンが多数出演する、いわゆるイケメン舞台の仕事が多かった。
本日、長い期間の公演がやっとおわり、休日をもらうことができた。
せっかくたがらと、連絡があった高校からの友達と会うことになった。常に仕事ばかりの圭にとって久しぶりの仕事以外の人間は嬉しいものであった。仕事の愚痴でも、話す予定であったが、開口一番言われたのは嫌いなあの一言だった。
「羨ましいなぁ。」
「なんで?」
「なんでって、仕事にイケメンがいるって最高じゃん!」
「最高?最高なことなんてなんもないよ。むしろ最悪。」
「なんで?」
「若手で仕事になれてない子はマイクの扱い下手だし、触るなっていっても触るから位置ずれて声が入らないし…慣れてきた子は生意気だし…ベテラン俳優には気を使わないといけないし…」
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