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この仕事は恩返しだと白石は社長に言われていた。売れなくて事務所も白石の扱いに悩んでいた時に舞台のオファーをくれたのが、今回の舞台の制作会社だ。
その舞台のおかげでファンが増え、昨年の戦隊物ヒーロー番組の主演であるレッドを勝ち取り、今じゃ人気俳優の仲間入りだ。
今回の制作会社があってこその白石なため、忙しいスケジュールではあるが、社長はオファーをうけたそうだ。
この舞台が終わったら次のクールのドラマ撮影も始まり本格的に仕事の場を舞台からドラマや映画等の映像にシフトチェンジをするらしい。
稽古に時間が取られ、仕事のシフトが組みにくい舞台は、スケジュールが空いている暇な時じゃないと入れることができない。
今までお世話になってきたいわゆる若手イケメンが揃ったイケメン舞台への出演は今回が最後になるだろう。
といっても、今回の舞台は国民的アイドルのしゅーちゃんの出演が決まっていたり、オペラ歌手として世界にも進出した朝永花絵や、ベテラン俳優の喜多村隆史等も出演したりと豪華なキャスティングである。メインは白石を含めたイケメン俳優達ではあるが、ひとくくりにイケメン舞台とは言えないのかもしれない。
大型の商業演劇と呼ばれるものに近い今回の舞台は、白石の最後の舞台として事務所としても白石にとっても良い転機であった。
「にしても、台本分厚くない?」
「頑張れよ!主演だろ!読み応えがあるしよかったな!」
「分厚いよこれ。」
「…仕方ないだろ。二部構成のミュージカルなんだから。」
「…鈴木さん、俺自信ない。」
「大丈夫だ。」
「稽古、俺出れるの?」
「主演だからな。でないとダメだろ。」
「この前言ってたCM撮影っていつさ?」
「25だな。」
「はい、これで稽古1日減った!」
「1日ぐらい大丈夫だろ?」
「1日でも、もったいないよ。今回は恩返しもかねてるんだから。」
「そういうとこ、真面目だよな。」
「俺はいつでも真面目だっつーの。」
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