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感染と同時に一瞬で完全な異形と化す奴もいれば、あたしみたいに異形化のスピードがやけに遅く、ずっと中途半端な状態のままの奴もいる。
とにかく、そうしてなんとか完全な異形化を免れてる人間達は、異形に塗れた地上を捨てて、地下のシェルター街へと移住した。
大災害を予想して、国家が秘密裏に地下世界を作り上げていたらしい。なんとも用意周到な話だ。
……まあ、地下に非難した所で感染を防げるわけでは無いんで、あくまでも対異形用の逃げ場程度なわけだが。
残された人間達は、異形の襲撃による外の脅威と、自分がいつ異形化するか知れないという、内の二重の脅威に晒されながらも、文明の残骸にしがみついてどうにか生きている。
未だ効果的なワクチンが開発される気配は無い。
ただ、静かに、ゆるやかに死を待つだけの世界……。
それが、P・V発生から五年が経った今日の現状だ。
――たった、五年。それだけの期間で、世界はこうも取り返しがつかない程に歪んでしまったのだ。
なあ、カミサマ。何でだよ?
この世界に飽きちまって、終わりにしたいのだとしても、もう少し遣り様があっただろう?
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