prologue

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 遠くの空に黒い雲の塊が見えました。これから雨が降りそうです。となれば、開けてはいられません。窓を閉め直します。  そういえば、屋敷内が少々薄暗くなってきているかもしれません。天気が優れない為でしょう。  アンドロイドである私には闇は何の問題もありませんが、人間(ヒト)である坊ちゃまは、そうはいきません。灯りが必要でしょう。  少し早いかもしれませんが燭台に火を灯しておきましょう。……と、思ったら蝋燭が縮み過ぎています。新しいものに変えなくては。  ああ、そうでした。屋敷中の蝋燭が、もう足りないのでした。これは、久々にお買い物に行かなくてはなりません。  電気が点かなくなってから、どのくらい経つでしょうか。忘れてしまいましたが、電化製品の使えない今、蝋燭は照明として重要な存在です。無くてはなりません。  ……そういえば、私も長い事充電をしていません。他の給仕(メイド)アンドロイド達はもう動かなくなってしまいましたが、何故か私だけは動けるようです。不思議です。不良品だからでしょうか?  ともかく、蝋燭を買いに行きましょう。坊ちゃまを暗闇に置いてはおけません。
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