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壊れた世界
この世界は、もう壊れている。
今から五年前、突如として世界に、あるウイルスが発生した。――Phantom Virus。
通称、P・Vと呼ばれるそれは、人体を異形へと作り変えてしまう恐怖の細菌だった。
発生は、偶然。薬剤開発の過程で生み出されてしまった誤算だった。
本来なら、癌細胞を無害な細胞に作り変えてしまうという、画期的な薬になる筈だったらしい。
でも、実際に出来上がったものは、製造者の意図とは大きくかけ離れたものだった。
それは、病体だろうと健康体だろうと、癌細胞を無害な細胞にどころか、人体そのものの構造を作り変えてしまう恐ろしいウイルスになっちまったんだ。
一番最初に異形化を遂げたのは、薬剤開発所の所員達だった。
薬の完成……実際には薬どころか有害なウイルスだったわけだけど。その完成と同時に所員達が感染・異形化したものだから、一般人はその段階ではまだ何にも把握出来ていなかった。
だもんで、突如街に異形の怪物が現われた時の騒ぎといったら……言うまでもないな。でも、本当に大変なことになったのは、その後事情が知れてからだった。
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