謎と疑い

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カ「ここは……」 あの後近くに街が見えたためそこへ行き着けば、見覚えのある街の変わりように唖然とした。 メ「少年院……?」 ここはぼくが牢獄へ行く前の少年院のある街だった。その街は街と言えるほど店は多くないし、目立つものといえば大きな少年院の建物くらいだ。 でも、誰がいなくてもおかしくないくらいに街は一言で言えばボロボロだった。 テントの張った店は燃え焦げたように屋根はなく、ただ食べ物だけが置かれている。所々腐ったものさえ見られる。 もう何の店だったのかわからなくなっているものや、鳥の死骸など異臭も漂う変わり果てた街。 ぼくがいなくなった後一体何があったのだろうか。来たいとは思っていなかった少年院の街が、こうも酷くなっていれば、さすがにそうも言ってられない。 カ「取り合えず外にゃァ人はいねェようだな。少年院行くぞォ」 メ「うん」 所々欠けている少年院。今にも壊れそうなぐらいのそれに人がいるようには見えない。それでもぼくの故郷に関する何かがあるかもしれない。 カ「空間移動でこうも場所移動が速ェなら、最初からそォすればよかったな……。アイツらとも結構離れちまったかもしれねェ」 メ「でも、たまたまだから……必ずしも目的地に着くわけじゃないよ?」 カ「空間移動の仕組みがわかりゃァ苦労しねェンだが」 メ「そしたら好きなとこ行き放題だね」 カ「まァ距離的には近くになるのかも知れねェな。好きなとこ行き放題かはわからねェが。」 メ「…………」 カ「メルマ?」 簡単な世間話をしていたけど、少年院の入り口を前にして立ち止まるぼくに、カルマがぼくの名前を呼ぶ。この有り様が気にはなっても、少年院にいた頃の記憶がぼくを震えさせる。 カ「大丈夫だァ」 震えるぼくの手をカルマが握ってくれる。それだけで大丈夫な気がした。 誰よりも安心する手に、ぼくの震えはすぐに落ち着く。もう怖くない。
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