第1章

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苦虫を潰したような表情をした先生が、言うか言うまいか悩んでいる。肩から拳にかけて小刻みに震えている。身近な人物が亡くなったのだ、しかも自分が受け持つ生徒で。 しばらく考えて、決心が着いたのか今回の事件の事を話し始める。 前田…千代っちの体には無数の切り傷と頸動脈を含んだ動脈がズタズタに切り裂かれており、首を吊っている状態で木に括り付けられていた首から下が酷かったらしい。成長途中の体からは夥しい血が流れていた。胸ポケットに膨らみがあるのに気付いた職員が、千代っちに詫びを入れながら胸元を探ったら四分の一に折りたたまれた手紙が入っていた。 先程の臨時で来る筈だった先生、茂木千鶴さんは浴槽の中で裸にされた状態でバラバラに解体されていたらしい。五体満足じゃなく五体不満足とでもいうべきか。無残な殺され方だったという。 彼女の持ち物の中からもまた手紙が発見されたそうだ。 “ちーちゃんはまだ6歳。 デモもう生きられないの。 生まれた時から病気を持っていて、 お医者さんに手術をしないと治らないって言われたの。 デモちーちゃんのお家お金ないから手術できないの。 もっと生きたかったなぁ… 皆みたいにお外で遊びたかった…。 死ぬ前に皆ちーちゃんのお顔を見て。 ちーちゃんもあなたのお顔を見るから。” “この手紙を読んだらあなたへ、 この手紙を他の5人に書いて。 これがちーちゃんの最後のイタズラだよ。 もし他の子に渡さなかったら、あなたも一緒に連れて行くから……”と。 あたしの下駄箱に入っていた手紙と同じ文面で。
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