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「ひゃっ」
声をあげてから私は口元を抑える。
ガタガタと自分の手足が震えているのが解る。
悲しさと悔しさが混ざった感情を頭の中で振りほどいてから声を出す。
「……いつから?」
「いつからって俺が学校に来た時には…もう」
その声には覇気がなく、いつもの彼とは思えない声色だ。佑くんはクラスでも部活でもムードメーカとして活気を集めるのが上手い人間なのだが、相当ショックが強いようだ。
「…こんなの信じられないよ。ねぇ…嘘だといって」
「…俺だって嘘だといいてぇよ!けど見てみろよ、あの変わり果てた前田を。
今頃、前田の名前を呼んでもあいつは二度と俺達が住む街には帰って来ないんだ…前田は亡くなっちまったんだ」
ハラハラと涙を零す佑くんに、それ以上の事は言えなかった。
佑くんが千代っちを好きなのを知っていたから。胸がギュッと押し潰される。
その様子を陰で見ている女の子が居た。
年は丁度1年生くらいだろう。
私も佑くんも千代っちの話をしていたので、その女の子が陰で見ている事も笑っている事も知らない。勿論、他の子達も変わり果てた千代を見ていたので、女の子の姿を誰1人気付く者はいなかった。
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