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宿に着き、雨宿りでもしていけ。というテマリの言葉に甘え、俺も一緒に部屋へ入った。
まず目に入ったのは、ごてごてに飾りがついた等身大の鏡。テマリは何でもないかのようにちょこっと覗き、軽く髪をとかして行ったが、俺はその華美な縁に目がいって仕方がなかった。部屋へ入ってさらに驚いたことに、部屋の家具はみんなそのごてごてで統一されていた。
しかしながら、砂の里の使者として呼ばれているだけのことはある、特別な事が無い限り到底泊まれなさそうなワンルームが、なんの違和感もなくテマリの砦となっていた。一人分にしては大きすぎる豪華なベットも、こいつが腰掛ければただの装飾品に過ぎない。砂の姫という異名をもったテマリなら当然の事なのかもしれない。散らばった荷物さえ、堂々と居座っている感じがした。
俺はテマリから渡された宿のタオルに顔を埋めながら、なんだか悔しい気持ちが渦巻いていた。
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