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バツが悪くてそっぽを向く俺を、テマリはじっと見ていた。そのうち耐えられなくなり、
― なんだよ。
と噛み付くと
― 別に。
とあしらわれた。
すると、テマリが先程のシュガースティクを取出し、
― あーぁ、せっかく見つけたのに。
と皮肉を言ってきやがった。
― 欲しいなんて言ってねぇ。
― 欲しそうにしてたじゃないか。
― してねぇよ。
偉そうにしていても、説得力が無いことは分かってた。ただの意地だった。
しかしテマリは、そんな俺を見て言った。
― じゃ、私が使お。
― は?
変なことを言ったかと思うやいなや、テマリは早々にシュガースティクを開けていた。
― …お前ブラック派じゃねぇの?
― ブラック派って何だよ。どっちでもいいだけだ。
澄ました顔でそう言うと、砂糖を少し入れスプーンで混ぜる。その、残り少ないコーヒーに、わざわざ。
くいっと飲み干すテマリを暫らく茫然と眺めていたが、そのうちだんだん苦い気持ちが俺の中で広がっていった。情けねぇなぁ…と実感。
― 美味しかった。
とカップを戻す彼女に、優しい甘さを知る。それらが全部恥ずかしくて、俺はもう、笑うしかなかった。
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