ファインダー越しの風景

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「綾瀬。コンタクトはしてない。」 「……そうですか。失礼しました。」 長野さんにそう言われればお仕舞い。 再度ファインダーを覗くも、やっぱり違和感は拭えず。 「……………」 これじゃ、いい写真なんて無理だ。 カメラを下ろして少し考える間、大翔の方に目を向ける。 うん。彼はいい感じだ。 その正面に腰を落としてファインダーを覗く。 髪はいい感じ。 メイクを少しだけやって、影を作る。 ターゲットが変更になったファインダーの向こう側。 話しながらいろんな表情をしてくれる大翔は、撮られ慣れてるといってもいいだろう。 やり易い。 被写体がいいと、ここまで撮りやすくなるんだ。 「…綾瀬。海斗は撮ったのか?」 「まだです。今考え中です。」 大翔から視線を外すことなく、長野さんに答える。 すると、目の前の大翔が口を開く。 「海斗。この子なら大丈夫なんじゃねぇの?」 「……………」 「大翔、気を使わなくていい。」 「…そういうんじゃないよ。ただ、仕事に対するプライドは相当なものだと見てとれる。 そうでしょ?長野さん。」 「…まぁ…確かに。」 「だったら、口外するなと言えば、しないな。長野さんの育てた子だろ?」 「そうだな。」 「ほら。海斗も言ってるし。」 会話するのもいいけど。 「あの。ちょっとだけ目線を上に。」 「あ。ごめん。」 「ほらね。」と大翔が笑いながら私を指差した。 ま。関係ない。 この人終わらせて、次を考えねば。
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