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その日の帰り、ゲリラ豪雨に見舞われ、傘など役に立たないくらいびしょびしょに濡れながら歩いていた。
(さすがに今日は、撮影できないな…)
毎日何かを写真に撮っておかないと、腕が鈍ってしまう気がして日常的になっていた撮影。
こんな日は、家にあるものの撮影で満足しないといけないのが自分のルールだけど。
やっぱりどこか物足りない。
自分で分析した。
それはなぜか?と。
私は"動"あるものの撮影が好きな偏食家らしいと断定。
カメラマンは、そう言っちゃダメなんだけど。
例えば、雑誌とかで見る靴や鞄、料理等、そういったものの撮影が嫌い。
逆に、人や景色等、固定されているものの、風でなびいたり、動く雲があったりと、何か"動"の種類がファインダーに入ってないと気が済まない。
そういうところも大翔に習って、オールラウンダーカメラマンとして自分を育てることが出来たら…
(…もう、最強じゃん!)
雨の中、そんなこと考えながら暗くなった夜道を歩いていた。
そして、その通り道にあるあの公園。
そこに通りかかったときだった。
「…………!」
あの長身。
あの洋服。
あの帽子。
どれも目にしたことのあるもの。
大雨の中、ベンチに腰を掛け、空を見上げて動かない海斗の姿がそこにあった。
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