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暗くて、おまけに大雨で。
薄暗い街灯では確認しづらいけど、視力がいい私には、その風貌だけで何となく理解できた。
暫く見ていたけど、全く動かない。
ふと、大翔の言葉を思い出し、様子を伺いに近付いてみる。
数メートルまで近付いたとき、海斗の異変に気付く。
顔が赤い。息も浅い。
少し震えて、唇は真っ青。
(…この人、熱が…!?)
恐る恐る額に触れてみる。
(熱い!!救急車…!)
そう思って携帯を手にし、119を押したところで発信せずに止まった。
(…!ダメだ!この人、謹慎中…!)
そうも言ってられない状況だってことは分かってる。
でも、相手はアイドルで、今一番騒がれている渦中の人物。
自分の傘を海斗に差し、迷いに迷って大翔に連絡してみた。
(…今、ドラマの撮影中だっけ!…やっぱり出ない!)
3回ほどかけたけど、直ぐに留守電に切り替わるので、諦めて携帯を鞄に戻した。
「……何してる?」
「!!!」
急に声が聞こえてきて、海斗の方を向いた。
怠そうに、かろうじて開けられてる目に凍りつく。
(…固まってる場合じゃない!一刻も早く連れて帰らなければ。)
そう思い、海斗の腕を掴んで肩に担ぐ。
「…帰りますよ。」
「放っておけよ。」
「…帰りますよ。先輩。」
…この場合、セーフだよな。うん。
私から話し掛けた訳じゃない。
ヨロヨロしながら、マンションへの夜道を帰った。
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