鼓動

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「……良かったですね。」 「え?」 「海斗さん。」 「ああ。綾瀬ちゃんのおかげかな。」 二日後、予定通り海斗は事務所に現れて、午前のレッスンを一緒にやることが出来た。 「でもさ、海斗が怪しんでるんだよ。」 「何をですか?」 「理奈が来てないって。」 「…最悪ですね。頑張ってください。」 「おいおいおい!!俺を見捨てる気か?」 「私が素面のあの人と会話するなんてあり得ませんから。誤魔化してくださいよ。…大翔さんが。」 「冷たくねぇ?」 「冷たいのはどっちですか。」 「だからごめんって!」 昨日、期待しながら向かった大翔の楽屋。 カメラのメンテナンスをしながら大翔を待って2時間。 やっと現れた大翔から言われたのは。 『ほら。さっさとやるぞ。』 『大翔さん?』 『あ?何言ってんだ。公也だろ。さっさとカメラ構えろ。』 …と。ドラマの役が抜けきれてない状態の大翔は、ろくな指導もされず。 やっと大翔自身と会話できるようになった頃には、次の仕事が入っていて。 …凄いと思う。役になりきるってこういうことなんだって分かったから。 凄いけど。あんまりだ。 私だって、前日寝てないのに。 「酷いです。」 「悪かったって!埋め合わせはするから!」 今日、顔を合わせてからずっとこの調子だった。 自分のやったことが悪かったと気付いてるらしい。
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