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それを持ち歩くのは不思議なことじゃない。
大翔は、レッスンや撮影の合間でカメラを教えると言った。
だから、出来のいい写真を見て、アングルや照明の当て方など、夜の野外での撮影方法を考えるのはごく自然な考え。
問題は、この写真を、海斗が大翔の鞄から見付けたってこと。
…いくら相棒と言えど、人の持ち物を勝手に漁るなよって言いたい。
(綾瀬、俺のミス。さっき休憩は自分の楽屋に行くって言ってたから、ついでに携帯取ってきてって言ったんだ。)
(…お前か。)
(ゴメンって。鞄のポケットに入れてたんだよ。)
(バレるの当たり前じゃないですか。)
「そこ。ヒソヒソ喋んな。」
「「はい。」」
「大翔、早く言え。正直に。」
「えっと、偶然見たんだよ。お前らがそんな話してるとこ。そこにパパラッチいたからぶんどってやったんだ。」
「そのパパラッチはお前か?綾瀬。」
「「ハイ!?」」
「この写真、お前のだろ。」
「どうしてそうなるんですか。」
「この位置、このライト、このアングル、この雨の反射具合、このブレ方。
俺はお前の写真を知ってる。お前の技法もお前の腕も。
断言できる。これはお前が撮った写真だ。」
「……………」
写真が伝える情報は、できる人ならここまで見抜けるのか。
驚いて言葉を失う。
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