対象

2/43
6677人が本棚に入れています
本棚に追加
/535ページ
「今日は85点ってとこか?」 「……や……」 「どうして?」 「……ぅんん……!!」 「…認めれば?」 「…嫌……嫌…!!」 「嫌がってない。」 頻繁に地方ライブに出るようになって、テレビにも慣れてきた。 あれ以来、海斗を避けるように行動して1週間後、海斗はひたすらしつこいと言うほど私を追い回した。 まるで、鬱憤を晴らしているかのように 何か言いたげな顔をしては私の唇に触れる。 それが拒否出来なくて、嬉しいとも思うし、でも、海斗の本性がなかなか見えずに悩んでいた。 「…っ……ハァ…ハァ…」 「綾瀬、まだ意地張るのか?ん?」 「…海斗ーー。どこだーー?」 「……チッ。邪魔が入ったな。続きはまたな?」 軽くキスすると、舞台の袖から出ていった。 その場に佇んで、ドキドキする胸の上に握り締めた両手を乗せる。 彼は、私をどう思ってるんだろう? ただの遊び相手? 女に触れたいから触れるだけの対象? はっきりしない海斗の態度は、私に不安と恐怖と絶望の淵に立たせる。 海斗のキスは、ただ唇を重ねるだけ。 深くなるわけでもなければ、私に身体を求めたりもしない。 息も出来ないほど 長く 唇を重ねるだけ。
/535ページ

最初のコメントを投稿しよう!