鼓動

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「そんで?例の人物は?」 「今日の目的はそれか?」 「当たり。」 服部には、私の隣にDoor the Mの高山海斗が引っ越してきたことを教えていた。 芸能部の加納と違って、政治部の服部は口が固いし安心できる部分もある。 加納を信じてない訳じゃないけど、"芸能部"関連のものなら、プライベートだろうが写真を撮ってこいと言ってくるのは目に見えている。 スクープなら、渡してもいいと思うのだが、カメラマンである前にマンションのオーナーなのだ。 住人が不快になることは出来ない。 「んー…これといって進展もない。って言うか、廊下でバッタリ会ったのも、あれから一度もない。」 「マジで?帰ってきてるのかよ?」 「多分。たまに音が聞こえる。」 「完全防音じゃなかったっけ?」 「そうだけど。さすがにエレキギターはアンプ繋げば大音量で。 生活中心のマンションに、そんな音の防音をつけられるはずもないよ。 まぁ、住人から苦情聞いてないから、聞こえてるのは私の部屋だけみたい。」 「曲でも作ってんのかな?」 「多分ね。」 「そんで?大倉理奈は?」 「知らないよ。本人にも会わないんだから。会えるはずもない。」 「加納が手を叩いて喜びそうなネタだけどな。」 「言わないでよ?」 「分かってるよ。」 半分呆れた感じで返してきた服部。 あの特訓された撮影の日。 あれから3ヶ月は過ぎていた。
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