6685人が本棚に入れています
本棚に追加
/535ページ
「そんで?例の人物は?」
「今日の目的はそれか?」
「当たり。」
服部には、私の隣にDoor the Mの高山海斗が引っ越してきたことを教えていた。
芸能部の加納と違って、政治部の服部は口が固いし安心できる部分もある。
加納を信じてない訳じゃないけど、"芸能部"関連のものなら、プライベートだろうが写真を撮ってこいと言ってくるのは目に見えている。
スクープなら、渡してもいいと思うのだが、カメラマンである前にマンションのオーナーなのだ。
住人が不快になることは出来ない。
「んー…これといって進展もない。って言うか、廊下でバッタリ会ったのも、あれから一度もない。」
「マジで?帰ってきてるのかよ?」
「多分。たまに音が聞こえる。」
「完全防音じゃなかったっけ?」
「そうだけど。さすがにエレキギターはアンプ繋げば大音量で。
生活中心のマンションに、そんな音の防音をつけられるはずもないよ。
まぁ、住人から苦情聞いてないから、聞こえてるのは私の部屋だけみたい。」
「曲でも作ってんのかな?」
「多分ね。」
「そんで?大倉理奈は?」
「知らないよ。本人にも会わないんだから。会えるはずもない。」
「加納が手を叩いて喜びそうなネタだけどな。」
「言わないでよ?」
「分かってるよ。」
半分呆れた感じで返してきた服部。
あの特訓された撮影の日。
あれから3ヶ月は過ぎていた。
最初のコメントを投稿しよう!