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「でもさ、お前、本当に知らなかったの?結構業界では有名だぜ?」
「何が?」
「この二人が元、カメラマンだってことだよ。」
「だって、この人たち人物ばかりじゃんか。記憶を辿れば、その頃の私は風景画しか撮ってないんだよ。タイミング悪かったのよ。きっと。」
彼らがカメラマンとして名前を売っていた時、私は高校生。
撮影の対象は、中学の時から風景画で、風景画のカメラマンだけしか興味を持っていなかった。
人物を本格的に写し始めたのは大学に行ってから。
その時にチラリと見たかもしれないが、人物画の知識が乏しかった分、目に留まらなかったのかもしれない。
「海斗はダメで、大翔に交渉したの?」
「その機会すらなかったのよ。私を覚えてくれてるなら、今すぐにでも弟子にしてもらいたいよ。」
「…まだ言ってる。相手はトップアイドルだぜ?無理無理。立場を弁えろよ。」
「でも、凄かったんだよ?ちょっと指導されただけで、私の写真が短時間で変わった!」
「凄いのは分かったよ。確かに、撮ってきた写真は、素人の俺ですら違いが分かったくらいだから。」
「ほら!人に感動を与えられる人物画が撮れる。弟子入りすれば風景画だって!」
「だから、相手はカメラマンじゃなくてトップアイドルだってば。」
分かってるけど、現像したときの高揚感がいまだに忘れられない。
私はもっと上手くなれる!
……はずだ。
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