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「また行こうな!今度は加納も一緒に!」と、爽やかな笑顔と共に服部と別れた。
お酒なんて滅多に飲むことはなく、たった2杯のビールだけでほろ酔い気分。
たまには、こんな時間も必要なのかもしれないな。
息抜きってやつ?
毎日カメラばっかりで、彼氏も大学で別れて以来既に3年はいない。
特にお洒落なんてすることもないし。
撮影するときに、動きやすいようにパンツルックが多い。
化粧も、薄くファンデーションと眉だけ。
女として終わってる。
「たまには写る側に回ってみれば、価値観とか変わるのかしら…」
真っ暗な夜の空を見上げながら呟いた。
カメラのことしか頭になく、不意に出た突拍子のない自分の言葉に苦笑する。
そして、思い出す。
私がカメラを好きになった理由。
それは、幼い頃、家族で撮った写真に感動を覚えたから。
みんな笑顔で。
それを見て笑顔になった家族がいて。
そのホンワカした雰囲気に感動した。
今は、家族などいない。
だけど、私がカメラに収めるものを親が見てくれていないか?という小さな期待と、私の写真で真実を知り、笑顔になり、幼い私が覚えたような感動を人に与えられないかと思っていて。
それで、カメラをやめられない。
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