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端から見れば、すごい構図。
女子トイレと男子トイレの間の壁に、ヤンキー座りで見下ろすアイドルと、洗面台の上で立って頭を下げる女。
「で?どういう風の吹き回し?」
「……いや…なんというか…」
「俺に惚れたとか?」
「…………はぁ?」
…しまった。思った以上に乾いた感情の声が出てしまった。
「アイドルが好きになったの?いいきっかけだから、少しでも近づきたいとでも思った?」
「……………」
た…試されている!
困ったぞ。どう言えばいいのか分からない。
yesと答えれば、"アイドル目当て"で近付いたとか思われる。
noと答えれば、自分を好きでもない人間に教える価値などないと思われる。
…どうしよう。どう答えれば…
「綾瀬ちゃん。正直に答えなよ?」
「……………」
「俺に恋してるの?」
「いえ。全く。」
「アイドル好きになった?」
「嫌いな方です。大がつく程。」
「なら、どうして弟子なわけ?」
「感動したからです!」
うん。しっくりいく答え。
「感動?俺に?」
「違います。私の撮った写真に。」
「…ブハッッ!!」
「……どうして笑うんですか。」
正直に話しているのに、いきなり吹き出した大翔を軽く睨む。
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